2008年9月作成  by miyata
香港の山歩き:いざという時のために
【救急・999
【熱中症】
【その他の疾病】
【栄養補給】

【救急・999】
これはあくまで私が経験した際の記録ですので必ずこの通りとは限りませんが、なにかの際のお役に立っていただければ幸いです。
<999へ電話をすると・・・>
電話をするとまず何が起きたのか、場所はどこか、周囲の状況はどうかなど基本的事項の説明を求められます。
<症状の説明>
脱水症状なら「dehydrated」熱中症なら「heat-stroke」など。
<場所の特定>
最初「マクリホースDP 24の・・」などと伝えましたがなかなか理解してもらえず、「M024など単純にDP番号だけを伝える方が正確に理解してもらえるようでした。その際番号だけでなく(マクリなら)「M」を忘れずに伝えることが重要!
DPの有無に拘わらずとにかく目印になる山、道、地名、物の名称やそこからの時間や距離など、使えるものはすべて動員して早く場所を特定してもらえるように心がけることが大切です。その為には地図を準備して事前に情報を確認しておけば効率的かも知れません。
<他にどのような情報が必要なのか?>
通話者以外の電話番号も聞かれ、実際通話者電話が使用中の時には別の番号にかかってきますから、できれば他に2-3名分の携帯電話を準備しておきましょう。また、患者および通話者のID 番号も準備しておいた方がよいでしょう。
それが終わればあとは先方からの指示を待ちます。その間先方から何度となく電話が入りますので携帯の充電はしっかりと!
できれば広東語で話した方がよいのですが、そうもいかないのでその場合は近くの香港人にお願いして手伝ってもらいましょう。彼らはほんと親切です。我々も見習わないといけません。
<警察からの連絡>
999へ連絡すると同時に警察にも連絡が入る仕組みのようで、しばらくして警察からも連絡がありました。「警察への届出は済んだか?」「それは知らなかった。その必要はあるのか?」「ではこの電話でいいから教えてくれ」。
内容はその後の状況の確認に始まり、出発地と出発時間、目的地、人数、国籍、水は十分に持っていたか、同行者の山の経験等で、最後は疾病者の職業・会社名まで質問を受け、また通話者の氏名(姓名とも)、香港居住かどうか、ID番号、居住地(住所ではなく地域名だけ)、年齢も報告。最初はいかがわしい電話(マスコミとか?)とも思いましたが、最後には「患者はちゃんと香港島の病院に搬送されたから安心しろ。病院名は中国語でしかわからないが、電話番号を教えておくから」といってくれたので一安心。

<いざというときに案外役立つ持ち物>
・ヘリから識別しやすいような派手な色のシャツやタオルなど
・骨折の際に副木代わりになるステッキ
・副木を固定するためのバンダナ(普通のタオルでは縛りにくい)、など。

【熱中症】
<症状>
・痛みを伴った筋肉の痙攣(熱痙攣)
・高温、特に蒸し暑いところでの疲労感、頭痛、めまい、吐き気、体温の上昇(熱疲労)
・高温の環境下での体温調整機能の低下、あるいは興奮、錯乱、痙攣、昏睡など(熱射病)
<手当>
・風通しがよく涼しいところに運び、衣服を緩め水平又は上半身をやや高めに寝かせる
・顔面が蒼白のときは足を高くする
・意識があり吐き気や嘔吐がなければ、冷たい水やスポーツ飲料を飲ませ塩分を摂らせる
・体温が高いときは水で全身を濡らし、風を送り体温を下げる
・逆に皮膚が冷たいあるいは震えがあるときには皮膚をマッサージする
・意識がないときには一刻も早く医療機関に連絡、など。
<予防>
・ 十分な休養(疲れる前に休むとよい)
・ 水分を補給し、汗で失われたビタミン・ミネラル補充の為のエネルギー・ドリンクやジュースの摂取。熱中症にかかってからでは水が欲しくても飲めないことがあるため、喉が渇いていなくてもこまめに水分補給することが望ましい。
・ 特に大量の汗をかく人は水分摂取だけだと血中の塩分濃度が薄まり痙攣を引き起こす可能性があるので塩分摂取も必須
・ 帽子、襟付きのシャツ、傘などで直射日光を遮る、水や氷で身体を冷やすなど体温の上昇を抑える。氷などで冷やす場合は頚動脈、わきの下、股の間など動脈上が効果的。
【その他の疾病
<骨折:一般的注意事項>
・ 安静にし、出血がある場合はまず止血をする
・ 骨折部位の抹消を観察できるように靴や靴下は脱がせる
・ 患部を固定、腫れを防ぐためできれば患部を高くする
・ 体位は疾病者の最も楽な体位にし、全身を毛布などで包み保温する


<捻挫、肉離れ:一般的注意事項>
・ ともにまず患部を冷やす。筋肉痛などの疲れと違いこれは患部が炎症をおこしているので、決して揉んだり刺激を与えてはいけない。
・ 足首の捻挫でその後どうしても歩行する必要がある場合は患部を固定する

【栄養補給】
<スタミナとバテ>
運動中に利用するエネルギー源には糖質と脂肪があり、最初は糖質が貯蔵されたグリコーゲンが燃料、それを血糖(グルコース)が補い更にそれが枯渇すると脂肪が使われます。すなわちグリコーゲンの貯蔵量により運動の持続力(スタミナ=鍛えられている筋肉ほど貯蔵量が多い)が決まり、それが欠乏して血糖も少なくなるとエネルギーの枯渇により「バテ」を感じます。
このグリコーゲンを蓄えるには、日頃からの食事でご飯や麺類などの炭水化物を摂ること(体内で分解されグリコーゲンや血糖となる)、トレーニングのあとに果物や果汁で糖分を補うことが大切です。
<運動前>
持続して燃焼する炭水化物がよい。ただし、あまり直前に摂ると運動中の胃に負担がかかることがありますので気をつけましょう。
<運動中>
消耗したエネルギーを早く補給するためには素早くエネルギーに変換される糖分が有効。
ただ、固形物は消化の為の代謝が働きエネルギーが使われ胃にもたれて身体が動きにくくなることもあるので、その場合は身体への負担が少なく摂取しやすい飲料がよいでしょう。
ハチミツなどのブドウ糖と果物の果糖を混ぜたものなどは効果的。更に、レモンなどの柑橘系を加えるとクエン酸を含み疲労回復にも効き目があります。
ただし、甘いジュースを大量に摂りすぎると糖分をエネルギーにする際に必要なビタミンBが大量に消費されてしまうので余計に疲労度を感じてしまいます。
また、行動食は少量を頻繁に口にすることで摂取した糖質がすぐにエネルギーとして利用されやすくなります。軽量かつ簡単に口にできるものを多種類取り混ぜれば飽きずによいかもしれません。
ある程度の行程では当然食事をとりますが、その場合でも食後すぐに運動を開始すると臓器を働かせる血液が不足して消化・吸収が十分に行われなくなってしまいます。ある程度の食休みを取るように心がけましょう。
要は、バテないためは早めの補給が大切です。
<運動後>
運動後15分以内は筋肉の栄養であるグリコーゲンを作る作用が最も活動的なので、この時間帯に糖質を多く含む食べ物や飲み物を多く摂取すると効果があります(糖質の豊富な果汁100%ジュースやバランスのよいスポーツ飲料、あるいはバナナやみかんなど持ち運びのよいものは便利)。
また、運動後6−8時間以内は筋肉の栄養の取り込みが持続的に活動するため、ご飯などの主食で糖質を補います。麺類やパンは血糖値を上昇させやすいので糖質を速やかに補うことができます。激しい運動の直後にはグリコーゲンの回復を促進させるタンパク質も一緒に補充するとよいのですが、日本人は欧米人と比べタンパク質を分解・吸収する力が弱いので大量に摂りすぎる必要はありません。
要は、ご飯を主食にタンパク質の主菜、野菜を使った副菜や汁物という昔ながらの「一汁二菜」が最適で、大豆製品や海藻、新鮮な果物などでミネラル・ビタミンを補充するとなおよいでしょう。
<運動日前までの準備>
普段の食生活、飲酒量、睡眠やストレッチなど日頃の身体のお手入れは別にして;
・ トレーニングによる疲れを取り除きかつ山歩時の不足に備えて貯えるために、1週間前になったらビタミン・ミネラルを多く摂る
・ 2―3日前からは糖質の摂取を増やしてエネルギー源を満タンにする。可能ならば4日前に激しい運動で一旦グリコーゲンを消費してから高糖質を摂ると貯蔵グリコーゲンの量が多くなります(充電池と同じ原理かな??)。
<心がけ次第で無理なくできる「勝手にまとめたバテ防止の基本4原則」>
・ 体温の上昇を抑える方策をとる(寒い場合は逆に体温の低下を抑える)
・ 疲れる前に休む
・ のどが渇く前にこまめに水分を補給する
・ バテる前にこまめに栄養を補給する
<注意>
上記はWebや本からの抜粋であくまで一般論です。その人の体力や体調、経験・状況に応じたやり方があるかと思いますので、いろいろと試してご自身に適した方法を見つけて下さい。
たとえば、「炭水化物で糖質を」といっても常日頃こればかりでは栄養が偏ってしまいます。日頃からバランスの取れた食事をし、かつバテに備えてこれらのことも考慮しながら取り組むとよいのではないでしょうか。
また、私は大変な汗かきでこの夏に2度も熱痙攣を起こしてしまいました。水分不足は感じなかったものの、水分だけで補った為その他への対応が不十分で塩分が完全に不足してしまったようです。過去には問題なく歩いたルートでもあったので侮っていたのでしょう。
その対策として、塩分を摂取するためにやや塩辛い具のミニおにぎりと昆布茶を用意しました。これなら組み合わせも悪くなく、休憩中に少しずつ食べることができるので胃への負担も少なくかつ空腹も満たされ、同時に塩分も補給できるという一石四鳥です。
ただし、「固形物は胃にもたれ、身体への負担もある」と言われていますので、人によっては生理食塩水や塩昆布、あるいは塩をそのまま舐める人さえいます。
要は自分で無理なく栄養補給できる方法が一番よいということなのでしょう。
いずれにしてもまずは自身の安全が第一です。さぁ、それでは気をつけて山を楽しみましょう!
(文責:宮田)

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